グルテンフリーが注目されている理由

最近人気モデルや著名人が実践している話題のグルテンフリー、健康に関心の高い人やダイエットを目指す人たちを中心に注目を集めています。世界ナンバーワン・テニスプレーヤーのジョコビッチ選手がグルテンフリーの食事に変えたことで、3大グランドスラムを制し、男子ランキング1位になったことを出版*1)されたことで改めて注目されています。

グルテンとは

グルテンとは、小麦や大麦などの穀物に含まれているタンパク質で 主にグルテニンとグリアジンの2種類から構成される、パンやピザ生地などを作る時に粉をまとめるための粘着性のある物質です。

グルテンはパン、パスタ類、麺類(ラーメン、うどん、そば)、ピザ、ケーキ、ドーナツ、スイーツ類、クラッカー、スナック類、シリアル類、揚げ物などの小麦系食品に含まれており、また、添加物として加工食品だけでなく、加工肉、乳製品(チーズスプレッド、加工チーズ)やソース、調味料やアイスクリームなど様々な製品に使われています。

小麦タンパクによる病気

小麦はアレルギーを引き起こす3大食品の一つであり、 食物依存性運動誘発アナフィラキシー*2)の最多原因食品とされています。 小麦又は小麦加工品が原因となる病気として、他にセリアック病*3)、 グルテン過敏症(グルテン不耐症)、があります。

セリアック病は、小腸の損傷を原因とする自己免疫疾患です。 グルテンが小腸にダメージを与えることで小腸が損傷して栄養を吸収できなくなり、 栄養失調状態を招きます。主な症状としては、腹痛や下痢や便秘などがあり、 米国では133人に1人の割合で存在する推計されています。

グルテン過敏症は、セリアック病のような自己免疫疾患ではなく、 発症原因は殆ど解明されていないのが実情です。 下痢や便秘、腹痛、疲労感、鼻炎などが症状として現れます。 潜在患者数はアメリカで20人に1人と言われており、 日本でも食生活の欧米化に伴い潜在患者数が増えていると推測されます。

グルテンフリーの効果

◆美肌効果・・血糖値を下げるインスリンは皮脂腺を刺激するホルモンでもあり、皮脂が過剰に分泌されて、ニキビや吹き出物、肌荒れの原因になると言われており、グルテンフリーによりインスリンも適性に調整され、その結果、肌にその効果が現れると考えられます。

◆ダイエット効果・・小麦系食品は、GI値*4)が高く血糖値を急上昇させるため、肥満の原因*5)になると言われ、また、グリアジンをたくさん摂取すると、食欲を増進させる効果があり、脳の中枢神経を刺激し「もっと食べたい」という中毒症状が増進され、さらに小麦系食品が欲しくなる悪循環に陥ると言われています。グルテンフリーとすることで血糖値が緩やかに上昇すること、食欲への中毒症状が薄らいでいくことでダイエットに役立つとされています。

◆老化防止・・・タンパク質や脂質が体内の「糖」と結びつく現象が「糖化」であり、老化の原因とされています。過剰な糖分を摂りインスリンによる処理が追いつかなくなり、過剰な糖がタンパク質と結合し糖化生成物となりますが、グルテンフリーはこれを抑制できます。

◆精神の安定・・・血糖値を下げるホルモンにアドレナリン(興奮効果)やコルチゾール(免疫機能低下)などがあり、これらのホルモンによりイライラし、心の安定を乱すようになりますが、グルテンフリーにより血糖値が安定するのと共に精神も落ちつくようになります。

グルテンフリーマーク

*2: 「運動誘発アナフィラキシー(EIAn)」
運動が引き金となって、じんま疹、呼吸困難、血圧低下、意識消失などのアナフィラキシー症状が出現する病気です。運動や食事がきっかけとなって、肥満細胞というアレルギー反応で重要な役割を担う細胞からヒスタミンという物質が放出されます。このヒスタミンが気管支を収縮させて呼吸困難を引き起こし、血管透過性を高めて血管の外側の組織に体液を漏出させることで浮腫みや血圧低下を引き起こします。 食事の後で運動をすることで、食物中に含まれるアレルゲンの吸収を高めることも誘因の一つと考えられています。

*3: 「セリアック病またはシリアック病(coeliac disease または celiac disease)」
小麦・大麦・ライ麦などに含まれるタンパク質の一種であるグルテンに対する免疫反応が引き金になって起こる自己免疫疾患であり、セリアック病の患者がグルテンを含有する食物などを摂取すると、消化酵素では分解できないグルテン分子の一部が小腸上皮組織内にペプチド鎖のまま取り込まれ、これに対する免疫反応がきっかけとなって自己免疫系が小腸の上皮組織を攻撃して炎症を起こすことで絨毛などを損傷し、上皮細胞の破壊にまで至ってしまいます。この結果、小腸から栄養を吸収出来なくなり、食事量に関らず栄養失調の状態に陥ります。

*4:「GI値」
GI値とは、グリセミック・インデックス(Glycemic Index)の略で、その食品が体内で糖に変わり血糖値が上昇するスピードを計ったものです。ブドウ糖を摂取した時の血糖値上昇を100として相対的に表しています。GI値が低ければ低いほど血糖値の上昇が遅くなり、インスリンの分泌も抑えられるのです。食品のGI値の例:食パン=95、白米=88、パスタ=65、インスタントラーメン=73

*5:「血糖値と肥満の関係」
小麦を使ったパンやプレッツェルなどは白砂糖よりもGI値*4)が高く、食後の血糖値を急上昇させ、血糖値を調整するためにインスリンが分泌され、血糖値が高い状態が続くとインスリンの分泌量が増加します。インスリンは余分なブドウ糖をグリコーゲンに変え、肝臓や筋肉にエネルギー源として蓄えるのを促進すると同時に脂肪が合成されるのを促進します。このため、急激な血糖値の上昇は結果的に脂肪の合成も促進し肥満につながります。

<参考文献・図書> 香西はな・矢野博己・加藤保子『小麦タンパク質とアレルギー』川崎医療福祉学会誌Vol.16 No.1 (2006)
デイビット・パールマター、クリスティン・ロバーグ(2013)『いつもパンがあなたを殺す』三笠書房
ノバク・ジョコビッチ(2015)『ジョコビッチの生まれ変わる食事』三五館
フォーブス弥生(2016)『2週間、小麦をやめてみませんか?』三五館